山村の草地、荒れ地、牧場などに生息し、早春と夏の2回発生するセセリだが、各地で減少の一途をたどっており現在では希少種である。早春の荒れ地ではすぐに見失ってしまうほどの撮影者泣かせの小さなセセリだが独特の模様は魅力的である。子供の頃は信州ならずとも私の出身地の愛知県でも奥三河には普通にいて、父が出張の時に「見慣れない蝶がいた」といって採ってきてくれたのが本種だった。衰退が始まった学生の頃に久しぶりに設楽町に出かけ何カ所かで確認して撮影したが、その後まもなく見られなくなり、その時の拙い写真は貴重な記録になってしまった。信州でも衰退が深刻になった1999年、多産地でもあり高校生のころから何度も通った大桑村のぞきど高原では一カ所であったが少数確認でき安堵したが、そこでもそれ以後は見つかっていない。現在は木曽町開田高原やその近辺には何カ所か生息しているが、定期的な草刈りが必要な本種の特殊な生息環境の維持が難しく、いずれの場所でも環境の劣化は危機的だ。現在長野県指定の天然記念物に指定され採集は禁止されているが、それよりも残った数少ない生息地の環境の維持が必須である。